いくつかの国で生活をしてみると自分で思っていた常識って場所が変わると常識じゃなくなってしまうんだなーということに気がついたり、これはまた別の機会で書かせていただきたいテーマではありますが、わたしは常日頃日本人でもなくスペイン人でもないどこにも属していない自分みたいなのを感じながら生きているわけですが、それはさておき、本日のテーマはタイトル通り、ちょっと驚いたスペインの日常のシーンをいくつかご紹介してみたいと思います。
自分の行動を説明する
こっちの人って自分の行動を一つ一つ解説する人が多い気がします。
たとえば、お台所で食器洗い機のプログラムが終わっていたとします。そうするとそれを見た人は自分に向かって、「あ、食器洗い終わったのね。」みたいなことを言い、続いて「じゃ、お皿片付けようかな。」とつぶやきながら食洗機の蓋を開けます。で、がしゃがしゃと片付けて、それが終わる頃、「じゃ、お茶でも入れるか。」「あ、お砂糖!」「そういえば、この前買ったチョコレート、どこだったけ?」
こんな感じでぶつぶつと自分の思考を丁寧に解説するのです。
こちらの友人の家にお邪魔してお母さんがこんな感じでずっと一人で話してるのを見た時、「お母さん、一人でずっと喋ってるけど」ってかなり驚いたのですが、その友達は、わたしが驚いていたことに気がつかなかったのか、ものすごく軽く流されてしまったのを覚えています。
だけどよく考えるとこれこそスペイン人なんだなー。わたしはスペインの人たちってすごく分かりやすくていいなといつも思っています。こうやってみんなが自分の行動や考えていることをダイレクトに表現してくれたら世界はもっとシンプルに動くのではないでしょうか。
エレベータの中では、体の向きを中心に
駅やショッピングセンターなど公共のエレベータに乗る時に挨拶しながら入ってくる人が結構います。そのまま話し続けるということは殆どありませんが、«¡Hola!» とか «Buenos días» はかなり頻繁に聞こえます。そして、これはすぐには気が付かなかったんですが、実はみなさんエレベータに乗り込むと入った順から奥に詰めていくという気はないようです。各自それぞれ自分の立ち止まりたいところで足を止めます。そして、みなさんなんとなく顔をエレベータの中心の方に向けて立ちます。これは、誰かに背中を向けるのは失礼という躾から来ているようです。
パン屑は小鳥ちゃんに
家での食事の際にはテーブル全体を覆う布のテーブルクロスをかけてからお皿を並べます。前菜があり、メインディッシュがあり、最後にデザート。これが一応の食べ方で、殆どの家庭ではここに毎日焼き立てのフランスパンも並びます。小さくちぎってスープに浸して食べたり、肉料理のソースを絡めたり、グリーンピースなんかのコロコロ小さな食べにくいものはパンでちょっと押すようにフォークに乗せて食べたりと、とにかくパンは色々な役割を果たしてくれるのですが、さて、食べ終わった後お皿をどけてみると、思いのほかパン屑がテーブル全体に散らばっているわけです。掃除がめんどくさそうやな、と思いきや、こちらの方々はテーブルクロスをぐるぐると巻いてお団子にし、テーブルの横の窓をがらっと開けてテーブルクロスのお団子を悪びれることなく広げてばさばさと振るのです。そう、午後3時から4時に道を歩いていると、建物の3階とか4階とかの窓が突然がらっと開いて大きなテーブルクロスからパン屑がはらはらと落ちていくあれの上から見たバージョンです。始めて見た時は、え?とか思いましたが。バルは出来るだけ床にゴミだの楊枝だのが落ちている店を選ぶのが正解、その反面、自分の家の中はとにかくとにかく綺麗に、という考えが定着しているスペイン。義実家でも義父は食事の後は当然のように窓の外にパン屑を捨てて、「小鳥にあげよう」と言っています?。
自分の子供の意思を尊重する
これはですね、子供の遊び場で受けた体験談です。うちの長男がまだ小さかった頃、マンションの庭で二、三人のお友達とスーパーヒーローのお人形や車で遊んでいました。するとうちの子が、一人の子の使っているお人形を使いたいと言い出したのです。わたしは近くで本を読みながら様子を窺っていたのですが、だんだんヒートアップしていって、大丈夫かな?と思っていた時、その子のお母さんがとことことやって来て子供たちの輪に入り、うちの息子に向かって「ルーカスの使ってるお人形使いたいの?」と聞きました。うちの子供は「うん。使いたいの。」と返事。するとそのお母さんは、「だけどルーカスは貸したくないんじゃないの?だから今はだめなのよ。」と。なるほど正論。もし日本でこういうことがあると、お母さんたちはこんなにずばっと自分の子供の友達に向かって言わないかな。どちらかというと自分の子供に「あなたはいつもでもそれで遊べるでしょ。貸してあげたら?」みたいなアドバイスをすることが多いんじゃないでしょうか。どちらが正しいとか間違いとか言うのではなく、ほんとにこれは文化の違いだなーと思ったことの一つでした。
日本では、親は子供が社会で周りとぶつかることなく生活する方法を教え、スペインでは、子供が困った時にはちゃんと守ってあげるからねということを教えるのでしょうか。この経験からそんなことを思いました。
プールの入り方
わたしはもともと水がちょっと怖いので、海に行ってもプールでもかなり控えめなんですが、それにしてもスペイン人は子供も大人も水への警戒心がないというかとにかくみなさん、水に入るとなるとすごい張り切ります。日本では小学生の頃から先生やプールの監視員さんから笛の音と共に「プールサイドは走らなーい!」「プールではふざけない!」「飛び込み禁止!」ととにかく脅しのような教育を受けてきたので、それが逆にわたしのプールは危ない場所=水への恐怖心をさらに煽ったんじゃないかとも思っていますが。それはそうと、プールに入るとき、こっちの人たちはみんな飛び込むんです。飛び込んでなんぼ。というか飛び込まないでどうやって水に入るんだと聞かれたことさえあるくらいで、子供はほぼみんな「爆弾!」と言いながらプールサイドを数メートル助走し、ジャンプした瞬間膝を抱えて全身をボールのようにして体を宙に放り投げるように飛び込むんですね。ちなみに小さな子がそれをできるようになると親はすごいすごい!と言って喜びます?。年があがるにつれだんだんスマートになって競泳選手がしゅーっと飛び込むような感じで飛び込むようになるようです。もちろん、わたしみたいに足がつったらやばいとかビキニの紐がほどけたらまずいとか色々言い訳を考えながら足からそろそろと水に入っていくのは、もうおばあちゃん以外何者でもありません。
仕事日だって、アペリティフで乾杯
朝食を家で食べずにオフィスに着いてからコーヒーを一杯という人はわたしが働いているオフィスでは30%くらいいます。つまりその人たちは8時から10時の間に朝食をとっています。もちろんその前に自宅で食べてから出社してくる人はもう少し早くに朝食を済ませているわけですが、スペインのお昼はだいたい午後の2時から3時すぎなので、そのちょっと前、つまり12時過ぎ頃から小腹が減って来ます。なんかお腹すいたねーみたいな会話がちょろちょろ聞こえてくると、必ず誰かが「トルティージャでも?」と提案します。仕事が忙しい時には無理でも少し余裕がある時には行こう行こうと何人か連なって近くのバルに降りていきます。どこのバルでも、ビールを一杯頼むとトルティージャのピンチョやポテトチップス、オリーブなどのおつまみを出してくれるので、15分くらいで軽く一杯飲んでオフィスに戻り朝の仕事を終わらせるのです。まぁ月曜から金曜の毎日というわけでもないですが、週に何回かはこんな感じで仕事している人が多いように思います。
思いつくままに並べてみましたが、とにかく楽しいスペインの日常。このテーマはまだまだ色々と出て来そうです。次回をお楽しみに!